イベント:Love Positive 30 - Normal Screen 2024年8月31日 土曜日
Love Positive 30 - Normal Screen 2024年8月31日 土曜日
こんにちは。8/31に横浜でNormal Screenさんの主催イベント「Love Positive 30」が開催されました。その中のイベントの一つとして、ノラノラジオの公開収録も行いました。その様子を一部ご紹介します。
◎Love Positive 30 - Normal Screen
https://normalscreen.org/events/lp30
前半はNormal ScreenのShoさんがスライドを使って、30年前の国際エイズ会議および会場で行われた野外アートイベント「Love Positive」について紹介されました。詳しくはg-lad xxさんのサイトで紹介されていますので、ぜひご覧ください。
◎レポート:「Love Positive 30 - 1994年の国際エイズ会議とアート」 - g-lad xx
https://gladxx.jp/features/2024/support/9637.html
後半はいよいよノラノラジオの公開収録。メンバー全員、人前で話すのも初めてなうえ、約100人の満員の観客を目の前にして緊張感はマックスでした。
最初にNo Rain, No Rainbow(のらのら)の自己紹介。LGBTQかつ薬物依存症の当事者が、自分たちの居場所を作るための活動をしているという話をしました。そして自分たちが前に出て話すことで、励まされる人もいると思うし、誰かに届くと思ってやっています。
次に、HIVのイベントになぜ薬物が出てくるのか、HIVと薬物の関係についてお話ししました。
HIVと薬物の関係を語るエピソードを1つご紹介すると、2015年に全国8つのHIV拠点病院を対象に行われた大規模調査で、新規でHIV陽性が判明した人の55%、約2人に1人に薬物使用歴があったという報告があります。背景には、セクマイの人ではセックスドラッグとして薬物が使用されるケースがあり、その場合HIVに感染するリスクも高くなります。セクシュアリティ、HIV、薬物の問題は密接に絡み合っているのです。
また、HIVと薬物依存症という2つの病気自体にも共通点があります。どちらも慢性疾患で、生涯完治することはないということ。そしてどちらも差別やスティグマに晒されやすい病気だということです。
ただでさえ、HIVにかかった人は大きな秘密を抱えます。カミングアウトするかどうか悩み、結果として社会から孤立しがちです。さらに、HIVにかかった人の中にもし薬物依存症の方がいたとすれば、後ろめたさを抱えながら世の中に知られてはいけない秘密を二重に持って生きることになります。それはとても孤独で、生きづらいことです。
続いて、HIVと薬物依存症という2つの病気の比較についてお話ししました。
HIVを取り巻く環境はこの30年間で様変わりしました。30年前は「HIV=死」だったのが、今は1日1回薬を飲めば普通の生活が送れるようになり、社会全体にU=Uの概念も浸透してきています。いまやHIVになった人に、「快楽のためにHIVにかかった」などという人はいません。治療が必要な一人の人間として扱われます。
一方で、薬物依存症については「ダメ。ゼッタイ。」のキャッチフレーズが30年以上使われ続けています。薬物は法律の問題なのではと思う方もいらっしゃるでしょう。また、薬物をやったことのない人にとって、薬物問題は他人事に聞こえるかもしれません。しかし、2023年の厚労省の全国調査によると、薬物の年間使用経験者は覚醒剤約11万人、大麻約20万人に加えて、市販薬の乱用者が10・20代を中心に約65万人と推定されています。これは衝撃的な数字です。しかも市販薬だけの数字ですので、30~40代の乱用が多いといわれる処方薬も含めると、潜在的にはさらに沢山の乱用者が存在すると想像されます。このように、合法・違法を問わず、実際には薬物乱用は誰にでも起こりうる問題なのです。
私たち当事者は、薬物依存症者のことを「快楽主義者で、意志が弱い犯罪者」とは考えません。近年、依存症の「自己治療仮説」という言葉が知られるようになってきましたが、私たち薬物依存症者は何とか死なないで生き延びようとして、過ちを繰り返しながら必死にそれぞれの道を歩いてきました。私たちは薬物依存症者をHIVと同じように病気にかかり、治療が必要な一人の人間として捉えます。ゾンビやモンスターではありません。
なりたくてHIVになった人がいないのと同様に、望んで薬物依存症になった人など一人もいません。誰もが自分だけは薬をやめられると思って、それでも一人でやめ続けることが難しい病気、それが薬物依存症の根深さです。
私たちはエイズにやられっぱなしではなく、30年間でエイズと戦う術を得て社会を変えてきました。「エイズから社会を守る」という考え方から、「HIVになっても幸せに生きられる社会」に、社会の構造や考え方をアップデートしてきました。エイズと同様、薬物依存症についても、「依存症になっても回復して生きられる社会」に、きっと同じように少しずつ社会を変えていくことができると信じたいです。
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